多国籍労働相談の報告

1991年6月、ゼネラルユニオンは、「だれでも加盟できる全労協」合同労組として発足した。以降、パート・派遣・臨時労働者の相談だけでなく、「実質未組織」ともいえる「官公労の大単産」傘下の政府・自治体などの労働者の【三重?加盟】も拡大してきた。もちろん、「(既成の)組合加盟の有無にかかわらず、国籍や滞日資格を問わない」というのが、ゼネラルユニオンのキャッチフレーズであった。だが、それへ向けての準備を開始するまでもなく、次つぎに、外国人労働者からの労働相談と支援要請が集まりだした。

 

しかも驚くことには、それがトレンディ、かつ華やかに急増しつつある各地の英会話学校の外国人教師の「駆け込み寺」に、わがユニオンがなったのである。今ごろ、日本で爆発的に売れているものの一つ「英字新聞の求人広告」などで、外国人を雇うのである。しかも、教室は駅前の貸しピルで十分。その中心が語学教師の募集なので、設備投資は不要で、リスクはない。日本人経営者は英語ができなくても、オーナーになれる。利益は、英会話教育の授業料と賃金の差額から、家賃と広告代を差し引いた金額。ひどい日銭目当ての、経営者も少なくない。こうした「荒稼ぎの水商売」といった趣である。

 

講師採用は、教育能力より、カツコいい白人など、外見を重視する差別も多く、アジア人には厳しい。就労ピザがとれたら来なくなる「したたかな外国人」もいるが、前払い受講チケットを販売したまま、行方をくらます悪質経営者もいる。誰でも開設できるという安易な業界で、元手要らずで儲かり、笑いが止まらない。何らの法規制もない。

外国人教師と生徒を巻きこんだトラブル多発の原因がここにある。相談に来られた外国人教師が、口々に訴えた問題点であり、言葉も通じず、習慣も違うため深刻である。
梅田と難波にあるハル英会話学院で働いていたアメリカ・イギリス・ニュージーランドなどの労働者から、「4月から賃金遅配で、一方的休業も出てきた」という相談があり、ゼネラルユニオンに支援要請があった。外国人を管理する日本人スタッフも同じ境遇で、労組の対策会議の通訳をしながら、真剣に成り行きを見守っていた。

そして労組結成当初の団交で、社長は「まもなく賃金を払う」と再確認させられながら、再び約束を破ったため、何度もゼネラルユニオンで抗議交渉をもつこととなった。そして、賃金支払いと約半月分の休業中の補償を求めて、天満労基署に申告に赴いた。行政も進んだもので、玄関に「英語の労基法パンフ」があり、仲間は「私の国には労基署のようなものはなく、素晴らしい」と、喜んだのだが……。「ここには英語のわかる監督官はいません」「契約書があいまいなので、休業補償の勧告は困難」との回答であった。「梅田が近く、毎日外国人が来て困っている」とぼやく監督官氏に、山原委員長が、通訳をして申告するハメになった。タガログ語やタイ語しか話せず、通訳もいない労働者にはどういう対応をするつもりなのだろうか。
とにかく行政の怠慢を追及し、「国際問題になるぞ」と脅かしたりすると、翌日さっそく監督署は現地へ行き、命令を交付することとなった。一方休業補償は、団交の力で全額支払わせ、要求通りの解決をみた。

6月になると大阪・中津にあるネバーランドというフランチャイズ式の幼児むけの英会話教室で働いていたイギリスの仲間に対し、この夏は働きに来なくていい、休業補償はない」と通告があった。
このケースでは、監督署をアテにせず、団交で抗議していった。社長は、「無責任な外国人が多い」、と聞くに耐えない中傷をしながら、嫌々、労組の要求は受入れた。一方的レイオフも、あっさり撤回され、原職復帰を実現できた。

そして8月、今度は同じネバーランドで「ワーキングホリデー」というピザで働いていたオーストラリァの女性二名が深刻な協力依頼に訪れた。紹介者は、前項の一件でゼネラルユニオンを知っていた日本人スタッフであった。
「故国から母親重病との急報があり、とりあえず授業を休ませてほしい」と会社へ電話したら、会社は「授業に穴があく休暇は認められない。退職も自由にできない」と拒否。そのまま休んだら、会社から「授業料や損害賠償など一三万円を払え」という内容証明が届いた。オーストラリア領事館に相談に行くと「裁判はできるが、帰国は遅れる……」という頼りなくかつ、不安材料のみのコメントしかなかったそうだ。「(お金がないので)損害賠償を払わず、帰国できる方法を教えてほしい」というのが、彼女たちの要望であった。ゼネラルユニオンとして「そんな金は払う必要はない。逆に未払賃金を請求すべきだ。裁判も不必要で、おせっかいな領事館も放っておけばいい」といった説明を試みた。

当初、半信半疑の様子だったが、会社への要求のあと、(通訳を含む)全員で天満労基署に揃って行き、「結局、何も慌てることなく帰国すればいい」ことが理解できた様子だった。9月、日本を去る日が近づいた。以降会社からは何らの嫌がらせもなかった。それどころか、あきらめていた未払賃金も、20数万円獲得できた。オマケに、母親の病気も、心配ないことがわかり、四方八方ハッピーの結末となった。「悪質な日本人経営者にひっかかり、一時はどうなるかと思ったが、初めて労組なるものに日本でめぐり合い、親切な支援を得て本当に良かった」と、最大級のお礼の言葉を残し彼女たちは帰国していった。

外国語学校ホットラインをつくるまでもなく、口コミでゼネラルユニオンに来たトラブルの一例だけでも、このように多く、かつ複雑である。もちろん企業意識などなく、解決して転職、または帰国となるケースが多いので、すぐ、ゼネラルユニオン組合員の増加とはならないが、われわれも「門前の小僧で、外国語勉強のためにもなる」と思って、根気よく付き合っていかねばならない、大切な活動ではないだろうか。