労働基準監督署は労働基準法を守らない使用者を励ましてはならない

始まり

2020年、新型コロナウィルスの第一波が日本を覆った頃、ゼネラルユニオンの組合員はGLOVAという派遣会社に勤務し、派遣先の専門学校で英語を教えていた。そして、新型コロナウィルスの影響でいくつかの授業はキャンセルされた。

そこでこの組合員は会社に休業手当の支払いを求めたが、会社は「あなたとの契約は業務委託契約なので休業手当は払わない」と答えた。

組合が介入し団体交渉が開かれた。会社側は組合の質問に何も答えることができなかった。

その後会社側は組合に対して「現在相談中なのでしばらく待って欲しい」を繰り返した。そして結局「契約は業務委託契約なので休業手当は払わない」との回答が組合に届いた。

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労働基準監督署への提訴、そして....

組合員は詳細な資料を携え労働基準監督署に赴いた。監督官の追加資料提供の求めにも迅速に応じた。

そして労働基準監督署はこの組合員の訴えを認め、「会社との契約は雇用契約である。従って、会社は休業手当を支払わねばならない」との判断に至り、これを会社と組合員とに通知した。

会社は、東京から弁護士が大阪の労働基準監督署を訪れることになった。

この会社は英語教師との契約のほとんどを「業務委託契約」としていて、「雇用主」としての責任を回避し続けてきた。だから、会社にとって労働基準監督署のこの判断は経営の在り方を揺るがす深刻なものだった。だから弁護士は労働基準監督署に対し「その判断は認められない。会社にとって一大事だ」と抵抗した。

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なぜ?

ところが、こうした会社の抵抗に直面した労働基準監督署は、会社を法律に従わせる措置を取らなかった。会社は労働基準監督署に対し、「労働基準監督署の判断には従わないが、休業手当に代わる、当該従業員への何らかの救済措置を考えます」と告げ、労働基準監督署はこれを黙認し、「一件落着」として処理した。

これを聞いた組合員と組合は「放置できない」と判断し、組合は労働基準監督署に赴きこの対応の理由を問いただした。

対応に当たった監督官は、「できることはやったつもりです。お力になれず申し訳ない」と繰り返した。

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最も信頼できる力はどこにあるのか?

組合が労働基準監督署に赴いた直前、当該の組合員の元に以下のようなメールが会社から届いた。

「あなたが収入減少により困っており、休業手当の支給を希望されていると伺いました。私たちGLOVAとあなたとは業務委託契約になるため、私たちから休業手当を支払うことはできません。しかし、私たちからあなたへフリーランスに対する政府の補助金等のアドバイスをさせていただければと考えました。」

会社は労働基準監督署から告げられたことを無視し、「業務委託契約」と言い続け、そして「収入の減少で困っているようだから、政府からフリーランスへの補助金を教える」というのだ。

会社は「労働基準監督署の判断は無視しても大丈夫」と安心し、このような恥知らずのメールを組合員に送った。

労働基準監督署は、労働基準法を守らない会社の振る舞いを結果的に支援したのだ。

われわれは、労働者の生活と権利を守り改善する上で労働基準監督署が重要な役割を果たすべきだと考えている。しかし同時に、労働基準監督署を巡る現実を直視する時、労働者が直面する問題を解決する上で、ここに依存することはできないこともまた指摘しておかねばならない。

労働者自身の団結を体現する労働組合を強く大きくすることこそ、最も確実な道である。

GLOVAと労働基準監督署に以下を伝えておく。

「今回の件はまだ『一件落着』していない」と。


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