非正規の社会保険加入訴訟ー国に勝訴

ゼネラルユニオン非正規労働者が、国相手に社会保険加入の権利訴訟
 3月20日。東京地裁が、注目すべき判決で、日本年金機構を断罪。


 インタラック社から偽装委託で、愛知県東海市教委に派遣されたゼネラルユニオンの講師
 
 が原告となり、社会保険加入の権利を求めて、国を訴えていた訴訟の判決が出された。


 厚生年金法や健康保険法では、非正規労働者でも加入できるハズなのに、旧社保庁が1980年に出した【内かん】内部指示により「通常の4分の3の労働時間=週30時間?、がなければダメ」との、違法な拒否が、悪質企業や年金事務所で、しばしば発生している。語学・スーパー・教委などでは、週29.5時間(雇用保険では、基準が20時間なので19.5時間)の脱法的契約も横行している。

 

 今回の訴訟の判決では、「厚年法や健保法では、労働時間の長短によって、被保険者にあたるか否かを左右する規定はない」と断言し、内かんへの疑義を呈した。一方、「所定の保険料を負担するに相応する報酬に至らないような短時間労働者は、これに含まない」との唯一の例外をも示した。
 裁判自体は、地裁が「休憩・準備・会議時間などをすべてサービス時間外だ」とし、「契約の29.5時間は実態でなく、優に35-40時間働いている」と認定した。
あわせて、インタラックと東海市教委の労働時間操作も指弾したうえで、「したがって、昭和55年内かんの基準の当否を論ずるまでもなく、原告が被保険者ではなかった、という被告日本年金機構の主張は採用できない」との判決を下した。

 ゼネラルユニオンとしては、非正

 

規労働者の権利を阻止している違法な壁に風穴が開いた、としてこの判決での前進を評価し、今後、非正規の誰もが社会保険や雇用保険に加入しうる運動をさらに拡大していく。また、虚偽の契約で加入を妨害している業界や自治体にも、改善要求を一斉に展開していくこととしたい。

 


       社会保険 加入拒否 取消 判決 【要旨ダイジェスト】
 
東京地裁 平成27年3月20日判決.24年【行ウ第70号】裁決取消等請求事件

原  告= S・アンドリュー。   原告訴訟代理人= 中島光孝弁護士
被  告・処分行政庁= 日本年金機構 ・ 国【法務大臣】 ・ 社会保険審査会

 判 決 主 文

1 被告・日本年金機構が、平成22年8月10日付で、原告に対してした、原告の厚生年金保険及び健康保険の、被保険者の資格の確認の請求を却下する、旨の、処分を取り消す。

2 被告・日本年金機構は、原告が平成21年4月6日から、平成22年3月26日まで、
   厚生年金保険及び健康保険の被保険者であったことの確認をせよ。

3 本件訴えのうち、原告の被告・国に対する請求に係る部分を却下する。
 
  当 裁 判 所 の 判 断
                                     【下線の小見出し文責はユニオン】

派遣会社の週29.5時間は保険逃れのウソ。学校も故意に、無給の長時間労働指示
            
●インタラックは、東海市から英語指導助手業務を受託し、原告と雇用契約を締結し、加木屋南小学校で従事させてきた。本件労働契約には、月曜日から金曜日までの午前8時から午後5時までで、昼食時間と休憩時間を除き、1日5.9時間、1週間29.5時間の労働をする旨が、定められていたが、本件労働契約に基づく原告の実際の労働時間は、これよりも長かった。

●原告は、インタラック社から本件小学校に配置されたときに、本件小学校長から、朝礼に出席するために、午前8時20分までに出勤するように言われていたことから、午前8時20分に出勤していた。朝礼では、本件小学校の加古教務主任から、その日の予定や行事について、の説明がなされていた。
●原告は、本件小学校に出勤して、職員室の机に座ると、すぐに授業に用いる教材であるプリントやフラッシュカードの確認をしていた。
●原告は、職員室と同じ棟にある国際教室で授業を行なっていた。職員室と国際教室との間の移動は、途中で他の教諭や生徒から呼び止められて話し掛けられたりするため、10分程度を要した。国際教室には、授業に必要な教材をそろえて、授業の開始時間の前までに到着していた。
原告は、授業と授業の合間の時間には、黒板を消したり、フラッシュカードの整理をしたりしていた。次の授業まで時間が空くときには、職員室に戻って、次の授業の準備をしたりしていた。

●原告は、午後0時25分から午後1時15分までの昼食の時間に、職員室で弁当を受け取ってから、担当するクラスの教室に行き、そこで担任の教諭や生徒と共に、弁当を食べながら会話をしていた。
●原告は、昼食後の午後1時15分から1時50分まで、2年生の生徒と一緒に国際教室の掃除をしていた。加古教務主任から指示されて始めたもので、インタラックと労働契約を締結して、本件小学校に配置されるようになってからも、引続き行なわれていた。この時間に掃除しきれなかったときには、授業の準備のための時間に、掃除の続きをすることもあった。

●原告は、本件小学校の校長から、午後4時30分までは、本件小学校にいるよう言われていたことから、午後4時30分まで残って、翌日又は翌週の授業の準備をしたり、担任の教諭と授業の打合せをしたりしていた。

ゼネラルユニオンの偽装委託摘発に、脱法工作開始。「教諭と打合せ・朝礼不要?」

●原告は、平成21年10月19日に、所属している労働組合の組合員らとともに
愛知労働局を訪れ、本件委託契約が、労働者派遣法に違反する偽装請負である旨の申告をしたところ、インタラックの担当者から、同月22日に「尾張横須賀駅近くの会議室で開催されるミーティングに参加するよう指示された。
●さらに、同月29日、原告が本件小学校に出勤すると、インタラックから送信されたFAX文書が、原告の机の上に置かれていた。FAX文書には「あなたがたは、先生方と打合せをしてはいけません。朝礼【朝のミーティング】に出席しないで下さい」等と記載されていた。
●原告は、本件小学校に滞在している間に、何もすることがないという時間はなく、休息をとることもできず、月曜日から金曜日まで、午前8時30分から午後4時30分まで、労働をしていた。
●原告が、従事していた時間については、タイムカードによる管理もなく、これを直接的に裏付ける客観的な証拠なない。もっとも、業務実施報告書は、原告が出勤するたびに、その日に実施した業務の内容を記入し、本件小学校の森田教頭らが、それを1カ月ごとに確認した上で押印していたと認められる。
これには「授業」以外にも、「準備」「その他の活動」も含まれ、いずれにしても、1時限から6時限を越えて、小学校に滞在していたことを示す記載がある。

●原告の上記供述内容が具体的かつ詳細であり、証人尋問の際の、被告日本年金機構による反対尋問によって揺らぐことなく一貫しており、不自然かつ不合理な点は見当たらず、信用性が高いというべきである。

地裁は7-8時間 週35-40時間と認定。 国は「会社に残業代要求を」と責任転化

●これに対し、被告日本年金機構は、「原告が本件労働契約に定められた労働時間を超えて労働していたのであれば、インタラックに対して、時間外手当を請求したり、本件労働契約の内容の変更を要求したりして当然であるのに、そのような行動をしていない、のは不自然である」と主張する。しかし原告の「契約書に残業代についての定めがなかった」ことから「残業代を請求しても支払ってもらえないだろう、と考えていた」との供述は不自然ではない。

●業務開始時刻及び業務終了時刻は、インタラックから東海市に、調整の上で通知する旨が定められていたが、インタラックが東海市に、出退勤の時刻を通知していたことをうかがわせる証拠ないし事情などは見当たらない。また、インタラックは、原告に対しても、担当する授業等が記載されたSLプランを、現実に、原告に送付しただけで、出退勤の時刻を管理することはしていない。被告日本年金機構も、これを争ってはいない。
●原告をいつ出退勤させ、どのよう勤務に従事させるか等については、本件小学校の校長らの現場における判断に委ね、その判断を黙認していたことがうかがわれる。

●以上により、被告日本年金機構の前記の主張は、採用することができず、本件労働契約に基づく原告の労働時間は、おおむね月曜日から金曜日までの午前8時30分【平成21年10月29日にFAXが送信されるまでは、午前8時20分】から午後4時30分までであって、1日8時間、1週約40時間に及ぶことになり、相当の休息時間を考慮するとしても、優に、1日7時間、1週間約35時間を超えるものとみとめられるというべきである。
●このほか、被告日本年金機構は「本件契約は1日5.9時間。1週29.5時間と定められており、原告はこのことを認識していた」旨も主張するが、本件原告の労働時間は、原告が労働契約に基づく労働に、現に従事した客観的な時間によって定まるものであって、労働契約の定めや原告の主観的な認識によって直ちに左右されるものではない。被告日本年金機構の上記主張もまた、採用することができない。

保険加入除外は、厚年法・健保法で限定【下記】。 他の契約は、被保険者資格あり

●厚年法9条は「適用事業所で使用される70歳未満の者は、厚生年金保険の被保険者とする」旨を定めている。一方、同法12条は、以下の各号のいずれかに該当するものは、厚生年金保険の被保険者としない、旨等を定めている。
 ー厚年法と健保法での加入除外条文
▼臨時に使用される者であって、日々雇い入れられる者
        【1か月を超え、引き続き使用される者を除く】」、
▼2か月以内の期間を定めて使用される者
        【所定期間を超え、引き続き使用されるに至った場合を除く】
▼季節的業務に使用される者【継続して4か月を超えて使用される場合を除く】
▼臨時的事業の事業所に使用される者
        【継続して6か月を超えて使用されるべき場合を除く】
        
●また健保法3条で「被保険者とは適用事業所に使用される者をいう」旨定められている。日雇特例被保険者となる場合を除き、厚年法12条各号と同様の者等が定められている。

「労働時間の長短で、加入資格基準当否?」 などの、法律や明文化した規定はナイ

●厚生年金保険及び健康保険の被保険者の資格に関する厚年法及び健保法の定めは、前記のとおりであって、適用事業所に使用される者について、その労働時間の長短によって、厚生年金保険及び健康保険の被保険者にあたるか否かが直ちに左右されるものとする旨を定めた明文の規定はない。
●保険料は、標準報酬に保険料率を乗じて得た額とされ、厚年法及び健保法は、所定の保険料を負担するのに相応する程度の報酬を、受けていない者についてまで、被保険者となることを、当然に予定しているとは解し難い。所定の保険料を負担するのに相応する報酬を受けるに至らないような短時間労働者は、これに含まないもの、と解することを許容していないとまでは解されない。
●これに対し、被告日本年金機構は「1日又は1週の所定労働時間及び1か月の所定労働日数が、当該事業所において、同種の業務に従事する通常の就労者の所定労働時間及び所定労働日数の、おおむね、4分の3以上である就労者については、原則として健康保険及び厚生年金保険の被保険者として取扱う」などと記載された昭和55年内かんが、健保法及び厚年法の解釈に合致し、合理性を有するとした上で、原告については、昭和55年内かんの基準を満たすものでないから、被保険者に当たらない旨を主張する。

●しかし、本件労働契約に基づく原告の労働時間は、1日7時間、1週35時間を超えるものであって、労基法32条の法定労働時間と比較しても、その4分の3を、優に超えるものであったと認められる。昭和55年内かんの基準によったとしても、原告が健康保険及び厚生年金保険の被保険者であった、という認定判断が左右されるものではない。

●したがって、昭和55年内かんの基準の当否を論ずるまでもなく、原告が被保険者ではなかった、という被告日本年金機構の主張は採用できない。


[小   活] 本件却下処分は、原告が被保険者であったことを否定した点で、違法なものと言わざるを得ない。

[義務付け]
行政事件訴訟法3条6項2号に規定する申請型の義務付けの訴えであると解されるところ、前記で述べたとおり、本件確認請求を却下した本件却下処分は違法であり、取消されるべきものであるから、本件義務付けは、要件に該当する。
被告日本年金機構に、被保険者であったことを確認すべき旨を命ずる。

[被告国に対する訴え]
特定の処分についての、裁決の取消しを求める訴訟の目的は、究極的には、当該処分の取消しを求めることにあると解される。前記で述べたとおり、本件却下処分を求める原告の請求は認容すべきものであるから、本件再審査裁決の取消しを求める訴えの利益は、失われるものと解される。
したがって、本件訴えのうち、原告の被告国に対する請求の係る部分は、訴えの利益を欠き、不適法であるというべきである。

 東京地裁民事第3部 裁判官  館内比佐志  福渡裕貴 川崎知正

 

 


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